自己紹介

自己紹介

 「満洲」の歴史を研究しています──と言うと,たいてい日本か中国の近現代史と思われるでしょう。しかし,「満洲」とは「マンジュ」という民族名・王朝名を意味する言葉で,17世紀に大清帝国(清朝)を建てた人びとを指し,そこから地域名にも転用されるようになったものです。しかも,その元来の範囲は日本海まで広がっていたので,「中国東北部」と同じではありません。ですが,現在その範囲は中・露に分割され,元来の主人の名前だったはずの「満洲」という言葉は忌避されるに至っています。「満洲」という地域は,歴史的に存在し,近代に変容し,そして現代に消滅したのです。
 このように,地域とは自明の存在ではなく,歴史的に生成・変化・消滅するものであり,また視点の置き方によって,切り取る範囲が変化する可変的・重層的な概念です。私は大清帝国とマンジュ人の歴史を,中国の王朝や少数民族という見方ではなく,ユーラシア世界の中でとらえて研究しています。柔軟な発想と,異国の文献に沈潜する忍耐力の双方が求められますが,我こそはという方を待っています。

業績

業績

単行本(単著)
■『大清帝国の形成と八旗制』名古屋大学出版会, 2015.2.

単行本(共著、分担執筆など)
□『清朝史研究の新たなる地平──フィールドと文書を追って』細谷良夫編, 山川出版社, 2008.2.
□『東アジア内海世界の交流史 周縁地域における社会制度の形成』加藤雄三・大西秀之・佐々木史郎編, 人文書院, 2008.3.
□『中世の北東アジアとアイヌ――奴児干永寧寺碑文とアイヌの北方世界――』菊池俊彦・中村和之編, 高志書院, 2008.3.
□『海域アジア史研究入門』桃木至朗編, 岩波書店, 2008.3. *韓国語訳, 2012.12.
□『世界史を書き直す 日本史を書き直す──阪大史学の挑戦──』(懐徳堂ライブラリー)懐徳堂記念会編, 和泉書院, 2008.6.
□『近代東北アジアの誕生──跨境史への試み』(スラブ・ユーラシア叢書)左近幸村編, 北海道大学出版会, 2008.12.
□『清朝とは何か』(別冊環⑯)岡田英弘編, 藤原書店, 2009.5.
□ Comparative Imperiology (Slavic Eurasian Studies 22), Matsuzato, Kimitaka(ed.), Slavic Research Center, Hokkaido University, 2010.3.
□『北東アジアの歴史と文化』菊池俊彦編, 北海道大学出版会, 2010.12.
□『東アジアの民族的世界──近代以前における多文化的状況と相互認識──』(人間文化叢書ユーラシアと日本──交流と表象──)佐々木史郎・加藤雄三編, 有志舎, 2011.3.
□『国境の出現』(中央ユーラシア環境史第2巻)窪田順平監修・承志編, 臨川書店, 2012.3.
□『海から見た歴史』(東アジア海域に漕ぎだす1)羽田正編・小島毅監修, 東京大学出版会, 2013.1.
□『清朝宮廷演劇文化の研究』磯部彰編, 勉誠出版, 2014.2.
□『「近世化」論と日本 「東アジア」の捉え方をめぐって』(アジア遊学)清水光明編、勉誠出版、2015.6.
□『地域史と世界史』(MINERVA世界史叢書①)、羽田正編、ミネルヴァ書房、2016

学術論文
●「清初正藍旗考──姻戚関係よりみた旗王権力の基礎構造──」『史学雑誌』第107編第7号, 1998.7, pp.1-38. *漢語訳:『満学研究』第7輯, 北京:民族出版社, 2002.10.
●「清初八旗における最有力軍団──太祖ヌルハチから摂政王ドルゴンへ──」『内陸アジア史研究』第16号, 2001.3, pp.13-37.
●「大清帝国史のための覚書──セミナー「清朝社会と八旗制」をめぐって──」『満族史研究通信』第10号, 2001.4, pp.110-126.
●「八旗旗王制の成立」『東洋学報』第83巻第1号, 2001.6, pp.55-85.
●「ヌルハチ時代のヒヤ制──清初侍衛考序説──」『東洋史研究』第62巻第1号, 2003.6, pp.97-136.
●「漢軍旗人 李成梁一族」岩井茂樹(編)『中国近世社会の秩序形成』京都:京都大学人文科学研究所, 2004.3, pp.191-236.
● “The Ch‘ing Empire as a Manchu Khanate: The Structure of Rule under the Eight Banners,”Acta Asiatica 88, 2005.1, pp.21-48. *漢語訳:『清史訳叢』第8輯, 北京:中国人民大学出版社, 2010.2.
●「大清帝国の政治空間と支配秩序――八旗制下の政治社会・序論――」『文献資料学の新たな可能性③』(大阪市立大学東洋史論叢別冊特集号), 2007.12, pp.245-270.
●「大清帝国史研究の現在──日本における概況と展望──」『東洋文化研究』(学習院大学東洋文化研究所)第10号, 2008.3, pp.347-372.
●「大清帝国の支配構造と八旗制──マンジュ王朝としての国制試論──」『中国史学』(中国史学会)第18巻, 2008.12, pp.159-180.
●「弐臣と功臣のあいだで──漢軍旗人としての李永芳一門──」『明清史研究』(明清史研究所)第5輯, 2009.4, pp.99-128.
●「清初期対漢軍旗人“満洲化”方策」中国社会科学院近代史研究所政治史研究室編『清代満漢関係研究』北京:社会科学文献出版社, 2011.8, pp.58-71.
●「清代の北京と紫禁城──武人と文人、旗人と民人──」『東京大学史料編纂所研究紀要』第22号, 2012.3, pp.281-291.
●「マンジュ(満洲)王朝としての大清帝国の国制とその歴史的位置──八旗制を中心に──」 『専修大学法学研究所所報』第55号, 2017, pp.22-59.

その他
・「書評 平野聡著『清帝国とチベット問題──多民族統合の成立と瓦解──』」『史学雑誌』第115編第9号, 2006.9, pp.89-98.
・「書評 承志著『ダイチン・グルンとその時代──帝国の形成と八旗社会──』」『内陸アジア史研究』第26号, 2011.3.31, pp.133-142.
・「書評 野田仁著『露清帝国とカザフ=ハン国』」『中国研究月報』第66巻第12号(通巻778号), 2012.12, pp.36-38.
・「書評 楠木賢道著『清初対モンゴル政策史の研究』」『満族史研究』第11号, 2012.12, pp.41-49.
・「書評 池尻陽子著『清朝前期のチベット仏教政策──扎薩克喇嘛制度の成立と展開──』」『中国研究月報』第68巻第8号(通巻798号), 2014.8, pp.48-50.
・「書評 『描かれた倭寇──「倭寇図巻」と「抗倭図巻」』」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』第69号, pp.10-11, 2015.4.
・高等学校教科書『新詳 世界史B』帝国書院, 2008.1.(川北稔他共著)
・高等学校教科書『新詳 世界史B』帝国書院, 2014.1.(川北稔他共著)
・「ユーラシアから見た日本──モンゴルと満洲から見る──」ジャパンエコー財団ホームページ「nippon.com.?知られざる日本の姿を世界へ?」:「東アジアの中の日本の歴史~中世・近世編~ 第2回」, 2011.

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