第29回地域文化研究専攻 主催
公開 シンポジウム
いま「暴力」を考える
第29回地域文化研究専攻主催 公開シンポジウム
いま「暴力」を考える
地域文化研究専攻では、さまざまな地域、時代、専門領域をカバーするスタッフの研究の多様性を活かし、横断的・越境的なテーマを取り上げてシンポジウムを開催してきました。今年度は「暴力」を中心テーマとし、とりわけ昨年から各地域でさまざまな形で現れている「暴力」の位相を、フランス・香港・アメリカの事例をもとに考察していきます。
今日、私たちは、当事者ならずとも、日常的にあらゆる種類の「暴力」に直面しています。個人に対する身体的暴力、戦争やテロ行為、公権力による強権発動といった可視的な「暴力」がある一方で、ジェンダー暴力や小児への性暴力、家庭内暴力のように、公の視線を逃れる仕方で振るわれている「暴力」が存在しています。さらにはヘイトクライムやハラスメントのなかには、必ずしも身体への直接的な働きかけを含まない「暴力」もあります。法や制度を介したシステム的な権力も、個人や集団に対する「暴力」の役割を果たすことがあります。
「暴力」を考えるうえでのこの数年の大きな変化として、世界各地で「暴力」の可視性が急速に拡大していることが挙げられます。スマートフォンで録画された可視的な「暴力」は、SNSを通じて世界中に拡散され、従来とは比較できないほどに視覚的・聴覚的なイメージの力を増大させています。他方で、これまで不可視の状態にあった「暴力」が、MeToo運動に代表される被害者の告発により明るみに出てきたケースもあります。重要なのは、可視化されて拡散される身体的な「暴力」のイメージの背後に、各地域や社会に特有の歴史および文化、異なるシステム的権力や対立構造が存在しており、そうしたいわば不可視の「暴力」の堆積が、ときに一人の個人の身体に凝縮されて現れていることです。
シンポジウムでは、こうした観点も踏まえて、いま「暴力」を考えるために「地域文化研究」がどのような視点を提示できるのかを検討していきます。
地域文化研究専攻主催シンポジウムは、広く一般に公開されています。ご関心をお持ちの多くの方々のご来聴をお待ちしますが、とりわけ、この専攻で学んでいる院生のみなさん、これから学びたいと考えているみなさんにはぜひご参加いただき、地域文化研究の可能性について一緒に考え、議論できることを願っています。
日時:2021年6月26日(土)14時〜17時30分
会場:オンライン(Zoom Webinar)
*入場無料 https://forms.gle/TfTm4fSsVEFbnv7y6から、事前登録をお願いします。
報告1:「現代フランスにおける暴力の諸相―ライシテの転機に」
伊達聖伸(地域文化研究専攻)
報告2:「『見える』暴力と『見えない』暴力―2019年大規模抗議活動以降の香港」
谷垣真理子(地域文化研究専攻)
報告3:「暴力と非暴力のアメリカ」
矢口祐人(地域文化研究専攻[情報学環])
コメンテーター:
キハラハント愛(地域文化研究専攻)
早川英明(地域文化研究専攻博士課程・日本学術振興会特別研究員)
司会:藤岡俊博(地域文化研究専攻)
主催:東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻