自己紹介

自己紹介

 宗教学をベースとして、フランスのライシテ(非宗教性または脱宗教性、政教分離、世俗主義)を中心に研究をしています。ある社会の本質を掴みたかったら、その社会の「宗教」を押さえるというのが宗教社会学の王道とも言えます。しかし、「宗教」も学問も実は西洋近代の産物であって、反省的な視点でとらえると、近現代フランスでは「世俗」の原理であるはずのライシテが「宗教」のような役回りをしばしば演じていることが見えてきます。その逆説に魅せられて、ライシテを宗教学的に扱うような研究を続けてきました。ライシテは共和国の精神的支柱として近現代フランスの歩みと重なり、解放と抑圧の両義性を帯びた普遍主義に連なっていますので、対象との距離をどう取るかということにも意識的になります。それからまた、ライシテはよく「フランス的例外」のひとつに数えあげられますが、ライシテの「脱フランス化」を試みることは、地域間比較の有効な切り口になります。カナダのケベック州もフィールドにしており、フランスとは異なるカトリックとライシテの関係やナショナリズムについて研究を進めています。

業績

業績

単行本(単著)
■『ライシテ、道徳、宗教学――もうひとつの近代フランス宗教史』勁草書房、2010年
■『ライシテから読む現代フランス――政治と宗教のいま』岩波新書、2018年

単行本(共著、分担執筆など)
□「コントとルナン――実証主義的宗教史の今日的可能性と不可能性」市川裕・松村一男・渡辺和子編『宗教史とは何か【上巻】』リトン、2008年
□「宗教革命としての民衆教育――キネの宗教的自由主義と共和主義」宇野重規・伊達聖伸・高山裕二編『社会統合と宗教的なもの――十九世紀フランスの経験』白水社、2011年
□« L’enseignement de la morale dans le département du Nord au temps de la laïcisation (1870-1914) », Philippe Guignet (sous la direction de), Transmettre les valeurs morales : Des réformes religieuses du XVIe siècle aux années 1960, Paris, Riveneuve, 2013.
□「19世紀フランスにおける市民宗教の諸相――コント、トクヴィル、デュルケム」永見文雄・三浦信孝・川出良枝編『ルソーと近代――ルソーの回帰・ルソーへの回帰』風行社、2014年
□「文学と思想」小倉孝誠編『十九世紀フランス文学を学ぶ人のために』世界思想社、2014年
□« De la laïcité de séparation à la laïcité de reconnaissance au Japon ? », Jean Baubérot, Micheline Milot et Philippe Portier (sous la direction de), Laïcité, laïcités : Reconfigurations et nouveau défis, Paris, Éditions de la Maison des sciences de l’homme, 2014.
□「ケベックの文化的アイデンティティと多文化共生の試み」上智大学アメリカ・カナダ研究所編『北米研究入門――「ナショナル」を問いなおす』上智大学出版、2015年
□「社会主義と宗教的なもの――ジャン・ジョレス」宇野重規・伊達聖伸・髙山裕二編『共和国か宗教か、それとも――十九世紀フランスの光と闇』白水社、2015年
□「フランスにおける「承認のライシテ」とその両義性――ムスリムの声は聞こえているか」磯前順一・川村覚文編『他者論的転回――宗教と公共空間』ナカニシヤ出版、2016年
□« Kishimoto Hideo et la laïcité du Japon : Parcours d'un chercheur japonais en sciences religieuses de l'après-guerre », Valentine Zuber, Patrick Cabanel et Raphaël Liogier (sous la direction de),Croire, s'engager, chercher : Autour de Jean Baubérot, du protestantisme à la laïcité, Turnhout, Brepols, 2016.
□« « L’amour pour principe, la durée pour base, la création pour but ?» Quelques points de convergence entre Comte et Bergson », Shin Abiko, Hisashi Fujita, Yasuhiko Sugimura éds., Considérations inactuelles : Bergson et la philosophie française du XIXe siècle, Hildesheim, OLMS , 2017.
□ 「宗教的なものの軌跡から見る現代社会の危機――日仏比較を通して」福井憲彦編『対立する国家と学問――危機に立ち向かう人文社会科学』勉誠出版、2018年
□「「宗教的なもの」をとらえ返す近現代フランスと「西アジア」に対する眼差し――マルセル・ゴーシェ、ルイ・マシニョン、ムハンマド・アルクーン」柴田大輔・中町信孝編『イスラームは特殊か――西アジアの宗教と政治の系譜』勁草書房、2018年
□「ヴォルテールと寛容」「ライシテの確立――コンコルダートから政教分離法へ」「ライシテの現在――反スカーフ法とブルキニ論争」剣持久木編『よくわかるフランス近現代史』ミネルヴァ書房、2018年
□「欧州人権裁判所におけるヴェールと十字架――イスラームに向きあう世俗的ヨーロッパのキリスト教的な系譜」池澤優編『政治化する宗教、宗教化する政治』(いま宗教に向きあう4世界編II)岩波書店、2019年

学術論文
●「フランス第三共和政におけるライックな道徳と宗教についての試論――1880年代における教育改革とその影響を中心に――」『宗教研究』332号、2002年
●「ライシテは市民宗教か」『宗教研究』354号、2007年
●「死者をいかに生かし続けるか――オーギュスト・コントにおける死者崇拝の構造」『死生学研究』第10号、2008年
●「デュルケムと市民宗教――ルソーとベラーのあいだ」『東北宗教学』第5号、2009年
●「ニコラ・サルコジの『ポジティヴなライシテ』と市民宗教の論理――2007年から2008年の発言を中心に」『東北福祉大学研究紀要』第34巻、2010年
●「2つのライシテ――スタジ委員会報告書とブシャール=テイラー委員会報告書を読む」『宗教法』第29号、2010年
●「多面体としてのライシテ――政教関係の国際比較のために」『日仏社会学会年報』第20号、2010年
●“Organ Transplants and Japanese Views of Life and Death : Talking with Living Pediatric Liver Donors”, Bulletin of Death and Life Studies vol.7, 2011.
● « Les rapports entre la laïcisation et les avancées des droits de l’homme au Japon », Croisements, n°1, 2011.
●「宗教を伝達する学校――ケベックのライシテと道徳・倫理・文化・スピリチュアリティ」『宗教研究』369号、2011年
●「現代ケベックの倫理・宗教文化教育――小学校の教科書の分析を通して」『ケベック研究』第3号
●「ライシテへの3つのアプローチ――マルセル・ゴーシェ、ジャン・ボベロ、ルネ・レモンの著作にみる研究動向の一断面」『宗教法』第31号、2012年
● « La crise de l’école au Japon : problématiques structurelles et statut du religieux », Cahiers Ferdiand Dumont, n°2, 2012.
● « Les postérités de la religion civile dans la France du XIXe siècle : Comte, Tocqueville, Durkheim », Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.47 (2012), 2013.
●「「2つのフランスの争い」のなかの社会的カトリシズム――マルク・サンニエ「シヨン」の軌跡1894~1910」『上智ヨーロッパ研究』第5号(2012年度)、2013年
●「フランスにおける宗教学・宗教研究の歴史的条件と一般的特徴――EPHEの展開を中心に」『東京大学宗教学年報』XXX(特別号)、2013年
●「シャルル・モーラスにおける宗教的ナショナリズムの思想構造」日本政治学会編『宗教と政治』(年報政治学2013-I)、木鐸社、2013年
● « La laïcité de reconnaissance s’enracine-t-elle au Japon ? », Diversité urbaine, vol. 13, n°1, 2013.
●「ヴォルテールとシャトーブリアンの宗教批判――「寛容」から「自由」へ」『東京大学宗教学年報』XXXI、2013年
●「フランスにおけるイスラームの制度化と表象の限界――宗教を管理するライシテの論理」『ODYSSEUS』別冊2(2014)、2015年
●「イスラームはいつ、いかにしてフランスの宗教になったのか」『宗教研究』383号、2015年
●「フランスにおける自己決定とその宗教的・文化的背景」『文化と哲学』32号、2015年●“Laïcité in Late Nineteenth-Century France and Its Significance Today,” Sophia Journal of European Studies, Vol. 8 (2015), 2016.
● « Les enjeux de la fin de vie et de la mort dans la dignité au Japon : Une réflexion au miroir du cas français », Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.50 (2015), 2016.
● « Quel avenir de la mémoire ? Les postérités de L’Avenir de la mémoire de Fernand Dumont », The Journal of American and Canadian Studies, No.33 (2015), 2016.
●「ケベックにおける間文化主義的なライシテ――その誕生と試練(上)」『思想』1110号、2016年
●「ケベックにおける間文化主義的なライシテ――その誕生と試練(下)」『思想』1111号、2016年
●“ “Religious Revival” in the Political World in Contemporary Japan with Special Reference to Religious Groups and Political Parties,” Journal of Religion In Japan, Volume 5, 2016.
●「フランスにおけるムスリムとの共生――アブダル・マリクの場合」『神奈川大学評論』86号、2017年
●「アブデヌール・ビダールにおけるライシテとイスラーム」『フランス哲学・思想研究』第22号、2017年
●「フランス、ベルギー、ケベックのライシテを比較する――成り立ちと現在の課題から」『金城学院大学キリスト教文化研究所紀要』第21号(別冊)、2017年
●「カトリシズムとセクシュアル・デモクラシー――フランスの同性婚反対運動とライシテ」『上智ヨーロッパ研究』10(2017年度)、2018年
●「論争のなかの「倫理・宗教文化」教育――近年の議論の動向と公共空間における「宗教」の位置」『ケベック研究』第10号、2018年
●「ケベックのヴェール論争――争点の移動と対決の構図」『思想』1134号、2018年
● « Des mythes nationaux du Japon contemporain : Entre le besoin de démythification et de déconstruction », Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, No.53 (2018), 2019.
●「現代ケベックにおける「宗教の自由」――法廷は西洋的「宗教」概念を再強化するのか」『アメリカ・カナダ研究』36号(2018年度)、2019年

翻訳
〇ジャン・ボベロ『フランスにおける脱宗教性(ライシテ)の歴史』(三浦信孝との共訳)、白水社クセジュ文庫、2009年
〇マルセル・ゴーシェ『民主主義と宗教』(藤田尚志との共訳)、トランスビュー、2010年
〇ルネ・レモン『政教分離を問いなおす』(工藤庸子との共訳)、青土社、2010年
〇ナタリ・リュカ『セクトの宗教社会学』白水社文庫クセジュ、2014年
〇フェルナン・デュモン『記憶の未来』白水社、2016年
〇ジェラール・ブシャール『間文化主義(インターカルチュラリズム)――多文化共生の新しい可能性』(丹羽卓・荒木隆人・古地順一郎・小松祐子・仲村愛との共訳)彩流社、2017年

その他
・「コラム・フランスのヴェール問題」田中雅一・川橋範子編『ジェンダーで学ぶ宗教学』世界思想社、2007年
・« L’universalisme et l’ethnocentrisme », Mémoire pour le DEF / FLE, L’institut franco-japonais de Tokyo et l’Université du Maine, 2008.
・「政教分離」星野英紀・池上良正・氣多雅子・島薗進・鶴岡賀雄編『宗教学事典』丸善、2010年
・「宗教」「カトリック」「プロテスタント」「ユダヤ教」「イスラム」「イスラムのヴェール」「ライシテ」「村の司祭と小学校教師」「医療:宗教とライシテの観点から」「国境なき医師団」田村毅・塩川徹也・鈴木雅生・西本晃二編『フランス文化事典』丸善、2012年
・「フランスの宗教状況」「ライシテ(世俗主義)」井上順孝編『世界宗教百科事典』丸善、2012年
・「ライシテの変貌――左派の原理から右派の原理へ?」『ソフィア』60巻2号、2012年、106~122頁。
・「二つのテロに見る現代フランスの危機」『ブリタニカ・ジャパン2016』ブリタニカ・ジャパン、2016
・研究ノート「欧州評議会と承認のライシテ――報告書「民主的な社会における信教の自由と共生」を糸口として」『上智大学外国語学部紀要』51号(2016)、2017年
・書評「菅野賢治『フランス・ユダヤの歴史』上下巻、慶応大学出版会、 2016年」『宗教研究』389号、 2017年
・書評「藤原聖子『ポスト多文化主義教育が描く宗教』岩波書店、2017年」『宗教研究』391号、 2018年
・書評「研究動向:キリスト教的=世俗的西洋の宗教・政治社会学――Christian Joppke,The Secular State Under Siege: Religion and Politics in Europe and Americaを読む」『東京大学宗教学年報』XXXV(2017年度)、2018年
・「ライシテ」社会思想史学会編『社会思想史事典』丸善、2019年


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